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オスプレイ裁判仮処分第3回審尋について 弁護団事務局長 池上 遊

 12月20日に開かれたオスプレイ裁判仮処分第3回審尋の内容について、弁護団事務局長の池上遊弁護士が解説します。

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 12月20日の第3回審尋では、債務者側(国)から、前回の債権者側(当方)の主張に対する反論が提出されました。国は、国造搦60ha(本件土地)の所有権について、契約書や登記などを根拠に昭和63年に県から旧南川副漁協に移転したもので、地権者らに移転したものではないとの主張を繰り返しています。

 

 前回の当方の主張では、昭和63年の売買に至るまでの経緯について、昭和38年に入植増反希望者に配分するとの申し合わせがなされたことにさかのぼって、それ以降に交わされた覚書などの書類や県議会での答弁などを踏まえて主張をしていました。要するに、国造干拓開始時の漁協への金銭による漁業補償とは別に、それまで漁業という生業のよりどころであった漁場を奪われることになる「漁家の生活再建」のため、土地を漁業者個人に配分することが前提となっていたということです。

 

 これに対し、国は、そういった事実を否定するばかりで、根拠となるようなめぼしい証拠も提出しないままでした。その上、当方が主張する「所有権」の実質について、有明海漁協が株式会社南川副ファームに対して本件土地における農作業及び同土地において生産・収穫された農作物の販売を委託していた際に、有明海漁協が受領していた販売収入について配分を受けていたという権利又は利益に過ぎないと言っています。生業のよりどころである土地所有権を矮小化する考えのもと、個々の組合員の生活再建は、漁協と組合員との間で土地の収益を配分する旨の合意をすることによっても行い得る、などと農業者や漁業者の生業について、まるで不労所得で生活すればよいとでも言わんばかりの主張です。

 

 また、前回、当方は、平成19年の漁協の合併前に、南川副漁協の顧問弁護士が、“合併によって新漁協の所有権と言われないために、『国造搦60ha管理運営協議会が登記面を南川副漁協に委託したものに過ぎず、漁協は実体法上の所有者でない』旨の覚書を結べばよい”との回答をし、覚書案を作っていたという新証拠を提出していました。これに対しても、提出した文書に押印がないなどの体裁だけをとらえて、信用できないと批判するのみです。本来であれば、国において、所有権の有無について明記したこのような文書をあらかじめ確認していてしかるべきで、これに対抗するような新証拠が提出され、当方の主張を否定してくるのかと身構えていましたが、そのようなこともありませんでした。

 

 裁判所は、当方の主張を否定するだけに終始した国の姿勢を踏まえて、今回の審尋で審尋(三者が法廷に集まって協議すること)は終了し、国の反論に対する当方の再反論をまって(来年1月19日)、それを前提に来年3月下旬に決定を出す、ということになりました。

 

 このほか、審尋では、11月29日の鹿児島県屋久島沖でのオスプレイ墜落事故を踏まえたオスプレイ配備の危険性についての当方の補充主張も提出し、古賀初次さんに意見陳述をしていただきました。

 

 弁護団としては、多数の証拠を提出して所有権(共有持分権)があることの立証に成功したと確信しています。